2009年02月12日
「ルイビトンの財布」の少し悲しいお話・・

ある男性のお話です・・・
その前に少し景気のご説明を・・
今の大不景気はアメリカの不良金融が招いたものですが、
日本では5,6年ほど前より特に建設業界においては
公共投資削減や談合の撤廃が進み建設関係会社の倒産が
増加していました・・
その方は現在60歳ほどでお住まいは兵庫田舎のほうです。
彼のご実家は小さい雑貨屋を営んでいて、お金持ちでは
ないですが食べるのには苦労しない程度の生活だったらしいです。
彼は家業の雑貨屋が嫌いで、地元の専門学校を卒業後暫くは家業の
手伝いをしていたのですが23歳のころ大阪で職場を探し移り、
食品関係や、不動産、建設関係などの営業職を転々としました。
給料も悪くはなかったのですが
決して贅沢をするのでもなく、ブランド品なども買ったことは無かったそうです。
また、バブル時代も経験しましたが当時はサラリーマンですから
せいぜい就職先の社長らの土地で儲けた話を隣で聞いている程度
だったとのことでした。
34歳のとき2年ほど付き合った彼女と結婚しました。
彼はその彼女のことが本当に大好きで
「何があっても絶対に大事に幸せにする。絶対!良い暮らしをさせてあげたい」
と思っていたとのことでした。
その方曰く、
「彼女にすれば僕の気持ちに押されて仕方なく結婚したのだろうなあ・・」
とのことでした。
そして結婚を期にサラリーマンをやめて雑貨の卸業をはじめました。
雑貨は小さい頃から家業で知識もあったからですが、でも家業をせずに
卸業にしたのはそちらのほうが儲けも大きいだろうと考えたからだそうです。
奥さんも今まで商売など経験したことも無かったのですが、小さい子供をあやしながら
電話を聞いたり、見よう見まねでの経理を夜遅くまでしながら彼の手伝いをしていたそうです。
バブル時代も終わっていましたがその影響も少なくてすみ3年後には何とか食べていける
程度の商いができていました。さらには役場への納品業者にもなり少しの信用もついてきました。
あるとき、同業者同士でのつきあいで生まれて初めての海外旅行、香港に行くことになりました。
彼は旅行とか泊まりで行くのは嫌いでした。
理由は奥さんのことが好きでしたから離れたくなかったらしいのです。
でも今回は、香港の雑貨品にも興味があったのとブランド品が安く買えるとの話を聞いていたからでした。
彼は、「海外旅行に行くのに財布に5万円しかもっていなくて・・」と笑いながら、
「今から思えば5万円ではブランド品も何も買えないよなあ」とまた笑いながら言いました。
しかし、家計も苦しいのがわかっていたのでそれ以上も奥さんには欲しいと
言えずそのまま旅行に行ったそうです・・
初めての海外旅行はさすがに驚きでした。香港での食事や夜店、雑貨店などすべてに驚いたそうです。
カバンや服の店もありました。「やすいですよ!」と流暢な日本語で招いてくれます。
なかまの一人が「香港はカラスミが有名なので買いに行こう!」といいだしたのでついていきましたが
一本5千円とか数万円するのもあり高額なのにはびっくりしたそうです。
そのとき彼はコーヒー代など色々使って
所持金が4万3千円ほどしか残ってなく、とても買えないので仲間が買ってるのを外で待っていたそうです。
それよりか、奥さんに何かブランドの財布でも買いたくて、日本でもシャネルやルイビトン、
ダンヒルなどはいやでも聞いたことはありましたが実際にどんな商品がおいてあるのかも
想像もつかなく、どんなのがあるのか考えてました・・
彼は仲間に、「悪いけどちょっと一人で先にホテルに帰るわ。」と言って奥さんへのプレゼントを
探しに行ったそうです・・
ある店先でブランド品を並べている店があり
見ていると店の中から「奥にもたくさんありますよ、安いですよ、!どうぞどうぞ!」と
店員さんに半分強制的に引っ張り込まれたそうです。
奥では厳重に鍵をした別部屋があり鉄格子をあけて中に入れてくれました。
店内にはカバン、時計、財布、キーホルダー、など色々ぎっしり並べられていて
その内の何が興味があるかみたいなことを聞かれたそうです。
彼は、「奥さんにプレゼントしたくて・・」と言うと、引き出しからシャネルの財布を
だして1万5千円だといわれて、「何か安いね?」と尋ねたら、コピーだと言ったそうです。
彼曰く、そのとき店員さんになめられたというか、たぶんこの人なら「わからない」と
思われたのではと笑っていました。
「お兄さんだけ特別!」といって奥からルイビトンの財布をもってきました。それはちゃんと
ルイビトンの袋に入れられており、ルイビトンの箱にも詰められていたそうです。
「これ本物!」「3万でいい」といわれ「よそでかったら7万円するよ!」とも。
奥さんのの擦り切れた薄い茶色の財布を思い出しながら彼は
「こんなの持ったら似合うだろうなあ・・」と奥さんの喜ぶ顔が浮び買ったそうです。
彼は、よくよく考えたら本物がこんなに安いわけないよな・・と、あとの
ある出来事の時に思い出したそうです。
帰りの空港で子供達には安い人形やチョコレートなどを買って、財布に
は残金は殆ど残らずで二泊三日の旅行が終わり何とか家に着いたとのことでした。
「真っ先に妻に渡しました」と彼は話し、
「本当に妻がびっくりして、妻が半泣きで「どうしたの?これ」と言われて・・」
でも理由をはなすと妻も喜んでくれて財布を大事にしてくれていました。と、
彼は苦笑いでした。
その後彼らにとって大きすぎる事件がおこります。
その、建設不況が日本でおきたとき大阪のある取引先の建設会社が倒産し
500万円程の不渡りを受けます。そのときは何とかやりくりしましたが
しかし、そこから歯車が狂いだしたそうです・・
銀行も不渡りを受けたのが分かるとなかなか資金繰りの希望には
応じてくれにくくなり、彼は少しのお金にも困るようになりました。
「恥ずかしい話、質屋にも初めていきました・・」と彼はその時を
思い出したのか、少し目を赤くして話していました。
また、奥さんにも大変苦労をかけたそうです。
「絶対大事にしてやろう・・」「・・幸せにしてやりたい・・」と
誓った妻にもやりくりなど苦労をさせたりで、
本当に自分が情けなくなり自分のふがいなさを責めたらしいです。
そこから彼は少し涙ぐみながら話しました・・
あるとき帰宅すると奥さんが・・
「本当にごめんなさい・・」と泣いてあやまったらしいのです・・
彼は「どうしたの?どうしたの?何かあったの?」と心配で問いかけました。
しかし彼女は何か言い難そうにして言いません。彼は「何でもいいから言ってごらん・・」
と言うと仕方なく奥さんが言い出したそうです・・
実は
奥さんが生活費が苦しくて自分が嫁入りのときに持ってきた着物などを集め
質屋にいったそうです。
翌日に迫った支払いのお金もつくらなければと・・
でも・・、それでも足りなくて・・ついに・・
・・手に持っていた夫がくれた最初のプレゼントの
ルイビトンの財布までもお金に換えようとしたのですが・・
そのとき、質屋さんから「すみませんがこれは本物ではないので・・」と
返されたらしいのです。
奥さんは・・
夫が初めての海外旅行で小遣いも5万円しか持たず・・
香港での仲間との付き合いも控えて残してくれたお金で・・
・・自分の為だけに残してくれた僅かなお金で・・
・・夫にすれば大きな大きな買い物・・
その当時の夫にすれば大きな買い物で、そのときの夫の気持ちを考えたら・・
彼に「本物ではない財布」とは言えなかったと・・
黙っているつもりが彼が帰宅して彼の顔を見ると思い出して涙が
とまらずにと・・
ここまでの話で彼はのどを詰まらせていた・・
その後はどうなったのですか?と聞くと、
結局自分の商売をやめて田舎にもどり実家の家業を細々と
しているとのことでした。
奥さんは?と聞くと、「半年前に癌で亡くなった・・」と・・
入院中の病室にはいつも「ルイビトンの財布」が枕元においてあり
売店での買い物などどこへいくのも使ってたのことでした・・
いつだったか彼が実家に戻ってからしばらくして、少しはお金の余裕が
できたとき奥さんに「本物のルイビトンの財布かってあげるよ・・
偽物と分かれば恥ずかしいでしょ・・」というと、
奥さんは「これは本物です!」と言って、綻びが目立ち古ぼけた「ルイビトンの財布」
を放さなかった・・・
その財布は最後まで枕元に置いてあったそうです・・
最後に彼は「少しだけだったけど彼女を大事に出来たと思う・・」と言ったので
私は自分のことのように満足しました・・。

皆さんは何をプレゼントしますか!?

今日もがんばりまーす

ちょと長くなっちゃいました・・。すみません・・
Posted by Nishihamaほるもん at
14:11
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